世界の花屋のなかのこと

Vol.27 余白

2020.8.12

世界の花屋 のなかのこと

「余白」という言葉に、みなさんはどんなイメージを思い浮かべますか。

ジュエリー作家の友人に、わたしの生み出す制作物や写真には「余白のイメージがある」と言われたことがあります。
確かにそういうデザインや写真がとても好きだし、意図的にそういう構図にしたりもするけれど。

前回のわたしのコラムで、引越し真っ只中と書きましたが、無事に新居に移りました。運び込んだもの、新しく買ったものも含めてとにかくダンボールに埋れていた新居もやっと片付いてきました。ちょうど8月の満月の頃に。

そのとき、広くなった床を見て、ふと「余白」という言葉が浮かび、そして急に腑に落ちたのです。ここ1年くらい、居心地が悪かったのはこれだったのだなぁと。

物理的な余白は、心身共に余白(余裕)を生み出してくれる気がしています。もちろん個人差があるので、大好きなものにたくさん囲まれている方が幸せを感じる方もいるでしょう。
人それぞれ。

わたしの場合は明らかに前者だというのに、自分自身と暮らしの中に、全く余白がなくなっていた。恐らくそれが精神的に矛盾をきたしていて、居心地の悪さに繋がっていたのだろうなと気づきました。

これまで、自分の暮らしを大切にしてきたとはあまり言えない日々でした。完全に仕事人間、仕事と趣味最優先、普段の衣食住はおざなり。そしてそれをどこか、そうとしか生きられないと思い込み、諦めていたようなところもあったはず。

退去作業をする中で、それをまざまざと見せつけられ、うんざりし、その真逆を生きてみたくなりました。ちょうど、遊びに出かけることもしにくい世の中。それならばと、そっち側に振り切って、向き合うことを決めたところです。苦手だったことがそうじゃなくなると、ちょっと良い人間になれた気がしませんか?いま、そのたびに自分を褒めてあげている新生活です。

生活らしい生活がはじまると、新しい環境と会話ができるようになってきました。夏のこの家は、何時ごろどんなところに陽が入って、どんな影を作り、自然たちのどんな声が聞こえて、どの道を通って風が通り抜け、月を見上げるベストポジションはどこか。そうするうちに近所のさくらねこと少し仲良くなれたり、変えたばかりの花瓶の水の透明さと、壁に現れる七色の煌めきに、うっとりできるようになったり。角がとれていくような感覚。

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物理的な余白が生まれると心にも余白が生まれて、すこし、おだやかな気持ちになれる。それが、自分の大切な人に伝わって、その先の優しい未来が生まれるといいなと考えたりもします。頑張って誰かのために動けることは素晴らしいけれど、自分が自分を大事にできていないときは、まずは自分。焦らずに。

引越しを機に、10年以上傍にあったものたちを、半分以上処分してきました。そこに何もないという存在意義。これからの自分に本当に必要なものだけを、じっくり選んで、愛していきたいなと思っています。余白を埋めすぎないように。

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不妊手術済みの証、桜の耳をしたさくらねこ。前からこの地域の人たちに可愛がられているようで、決まった時間にやってきます。すっかり下駄箱にはおやつを常備。もうメロメロ。

くまこ

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農家さんが心を込めて育てた草花を商品にしました。お部屋での飾りやすさを大切にデザインしています。

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