世界の花屋のなかのこと

Vol.35 会える贅沢

2020.10.14

引っ越して初めての金木犀の季節。自転車で走ると30秒ごとに甘い香りが流れてくるくらい、橙色の小さな花がたくさん咲いていて、またひとつ、自分の住む街を好きなる。
先週末の荒天で近所の金木犀はほぼ散ってしまって、悲しい。

前回の松下と同じく、金木犀ネタからはじまってしまいました。くまこです。あの香りってどうしてあんなに魅惑の香りなんでしょうね。

世界の花屋 のなかのこと

先週、関西まで足を運びました。

わたし、趣味の延長で、国内ふらふらと歩いてまわるのが好きなのですが、コロナ禍で随分出かけられずにいました。
趣味は音楽。好きなアーティストのライブに合わせて、その街にいる友人に会い、その街を楽しんで帰る。当たり前のようにあった日常が当たり前ではなくなってしまって、ぽっかりと心に穴が空いたまま。その日常が、どれだけ自分の助けになっていたかを思い知る日々。

コロナ禍になってから最初に行ったのも関西で、その時は本当に、ただそのライブに間に合うように向かっただけ。でも、友人と何ヶ月ぶりかに会い、当たり前のように通っていたライブハウスで音と声と光を思い切り浴びて、久しぶりにその空間で飲んだお酒が言葉にできないくらい美味しかった。

翌日、前日の夜のことをぼんやり考えた。いつもならライブの感想をあーだこーだ言い合うのに、あまり会話になってなかったな、と思い返す。

会えたこと、あの空間に戻ってこれたこと、好きな人たちが楽しそうだったこと、私たちが楽しめたこと。
ただそれだけで十分な夜だったのでした。「本当に楽しかった」他に言葉にできることはなかった。

いつもならその街の好きな店を回ってから帰るところを、その日はチェックアウト後、駅で空腹を満たし、空いている新大阪で551の肉まんを買って帰りました。そんな旅は恐らく初めてだったけれど、それだけで満足だったし、なんだかとっても疲れてしまった。久しぶりに味わう、幸せな疲れ。

そして先週はそれから1ヶ月半後。その最終日、1日空いたので、とあるバンドマンが営むレコード屋さんへ出向きました。

目的は彼らのバンドの新譜レコードを直接買えたらな、という淡い期待と、売り切れていても、近くまで来たのだから話ができればな、と。
顔見知りなのでとても驚かれ、コーヒーを淹れてくれて、色々と話すネタも尽きず、1時間以上居た気がします。

会えるっていいなぁと思いました。

今はSNSが盛んで、会っていないくても会えている錯覚を起こしやすい世の中になって、それはそれで素晴らしいことだと思うけれど、やっぱり直接会うって特別だなと思います。 彼らのレコードも本当はwebで買えたのですが、直接彼の手から渡してもらえることに賭けてみたのでした(店に着いたら残り3枚だった)。

そして、その時のお客さんが自分だけだったので少しわがままを言って、他にわたしが好きそうなレコードを選んでもらいました。彼はごそごそと店内から6枚選んでくれて、それらを店内で1枚少しずつ聴かせてくれる。彼の主観や、ちょっとしたエピソードも添えたりして。

世界の花屋 のなかのこと

友人とは言えない距離の相手に、ほんの少しのヒントで、好きそうな音楽を選ぶ。
なんて贅沢なんだろう。

音楽のサブスクリプションのおすすめ機能はとても有能で、わたしは普段まんまと勧められた曲をお気に入りに追加しているわけですが、そのシステム的なものではない、目の前の相手が好きそうな曲を真剣に考えてくれること。その曲を聴いている相手を想像してくれること。それがなんとも贅沢ですよね。とても愛おしい。

こういう出会い、大切にしています。私たちは実店舗はないけれど、温度のあるご相談やご注文が多い類だと思います。お客様とのやりとりに、目頭が熱くなること、あります。そして、その想いに出来る限り応えたいとも思っています。

結局選んでくれた6枚のうち2枚を買いました。好みど真ん中だったものと、かっこいいけれど絶対自分じゃ辿りつかないようなもの。

世界の花屋 のなかのこと

「また東京で」

そう言って店を出て、小腹が空いたので彼におすすめされたカフェに寄り、レコードショップの袋に気づいた店員さんに話しかけられ、少し話をして、帰路へ。 レコード3枚をどの荷物よりも大事に持ち帰りました。愛着が全然違う。

とても久しぶりに”旅”をした気分でした。

わたしはあまり予定をガチガチに決めるタイプではなく、ひとつふたつの目的以外は、割とその場で決めて動きます。
無理をせず、ふらっと寄った先に奇跡的な出会いがあったり、現地の人におすすめしてもらったり。そうしてその街が好きになる。

なんとなく、今はまだ、出かけること自体の気後れと、家にいることに慣れてしまってペースを戻しきれていないけれど、来年はまたふらりと出かけられるようになるといいなぁ。

世界の花屋 のなかのこと

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農家さんが心を込めて育てた草花を商品にしました。お部屋での飾りやすさを大切にデザインしています。

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